書評:邪悪な虫(ナポレオンの部隊壊滅!虫たちの悪魔的犯行) ゴキブリが可愛く見えてきた(笑)

邪悪な虫:ナポレオンの部隊壊滅!虫たちの悪魔的犯行

邪悪な虫:ナポレオンの部隊壊滅!虫たちの悪魔的犯行

『邪悪な虫』
ナポレオンの部隊壊滅!虫たちの悪魔的犯行
著者:エイミー・スチュワート

ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー
化学兵器を隠し持ち、オスとメスで殺し合い、人体をおよぎまわる。
-存在自体が罪悪である、おぞましき生命体。

昆虫はこれまでにも歴史を変えている。兵士たちを釘付けにしたことも、農地から人々を追い出したこともある。都市をのみこみ、森林を食らい、無数の人々に苦痛を負わせ、命を奪ってきた。

グロテスクな話もあれば、悲劇的な話もあるが、どれも小さないきものたちの力と複雑さに感嘆させられる。(かれらに)警戒をこめた畏敬の念を捧げる。(「まえがき」より)

不気味な色合いの表紙をした書籍に惹かれて手にとってみたはいいものの、読み始めるまでに数週間を要した。その予感は、的中した・・・。ちょっと怖い。いや、かなり恐ろしい・・・。ゴキブリをはじめとする地球上の世界各地に生息する、虫たちの底力を、まざまざと見せつけられる。

我々、人間と比べると、体のサイズは小さくて、足で踏んづけてしまえば即死させられる昆虫たち。しかし、この本は脳の中の常識を一変させる強烈な衝撃を読者に与えることでしょう。私も、その一人です。

『虫たちを舐めていたんだな、そのうちしっぺ返しを食らうかもしれない。これからは敬意を持って接するべきなんだ。決して背中を向けて油断してはいけない。もしそうすれば、その時は・・・。』

読んだ後の感想です。 鳥肌が立ち身震いし、口の中はカラカラに渇き、トイレは照明を点けないと入れなくなった。人間の歴史は昆虫との壮絶な闘いの歴史でもあったのだな。人間同士、それ以上の被害者をもたらした因縁のライバルなのかもしれない。

時に人間の命をも奪いかねない凶器を隠し持った昆虫が存在していたなんて、おとぎ話の小説・映画の中だけじゃないんだな・・・。事実は小説よりも奇なり、とはこのことか・・・。見逃してしまいがちなサイズだからこそ注意が必要なのだ。

そういえば最近、マダニに咬まれた日本人の大学生のニュースがあった。発熱し病院を受信したところマダニの可能性が高いという。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介することもあるマダニ。「つつがなく」とは無事である、問題がない、ということを表すそうだが、語源はツツガムシから来ているそうだ。

チャバネゴキブリ-3億5千年前から地球上に存在!?

(危険)チャバネゴキブリのページを開く

(危険)チャバネゴキブリのページを開く

この本の中で唯一、ゴキブリとして取り上げられた『チャバネゴキブリ 』。アメリカのとある公営住宅で感染症が流行した際の原因がチャバネゴキブリだったそうだ。今でこそゴキブリが不潔で不衛生な虫として有名だが、病気を伝播する証拠が得られなかった時代もあったそうだ。

しかし、この項目ではゴキブリの悪い面ばかりを記しているわけではない。確認されているゴキブリ4千種(それも凄いが)のうち、95パーセントはまったく人里離れた森の中や、丸太の下、洞窟の中、砂漠の石の下、湿地、湖や川のそばの暗い場所に生息しているそうだ。

我々人間のそばにいるゴキブリは、残りの5パーセントにすぎない。そう考えるとゴキブリに対する印象・考えも大分、やわらぐのではないだろうか。しかし、日本以外の国でも嫌われているのは間違いなさそうである。しかし次の項目では、またもゴキブリの不快な知識を得ることになる(笑)。

(危険)チャバネゴキブリのページを開く

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雑食動物のゴキブリが人間の生活空間に持ち込む無数の病原体がある。大腸菌、サルモネラ菌、らい菌、チフス菌、赤痢菌、ペスト菌、連鎖球菌など。ゴキブリは物を食べるとき、しばしば収穫物の少量を吐き戻して、つぎの食事をするそうだ・・・。また、移動したり、餌を食べながら排便もして、挽いたコショウほどの大きさの小さい糞を排泄する。これらが病気の伝播を用意にするのだそうな。※環境、場所で違いはあるだろうが。

しかし、そんな汚らしい昆虫を生活環境から追いだそうとすると厄介な状態に陥る。家からゴキブリを追い出そうと家庭用殺虫剤を利用すると人間の健康問題を引き起こすのだ。一番のゴキブリ対策は家を清潔に保ち、侵入口を塞ぐことが最高の作戦なのだそう。

また、最近の研究で『死んだゴキブリの汁』が忌避剤として有効であるそうだが、家庭で用いるには抵抗が強い。世の研究者たちは人間が感知せずに、また健康への影響をゼロにしたゴキブリ汁の忌避剤を研究・開発してもらえないだろうか。私のささやかな願いがまた1つ増えた。

この本、ゴキブリ以外にも様々な昆虫について記されている。それは単なる図鑑で習性を紹介するような内容ではない。人間と昆虫との長い戦いが記されている。昆虫嫌いが昆虫博士になる可能性も秘めた、良書だと感じた。

果たして、

ゴキブリは殺人を犯す凶悪な昆虫なのだろうか?

ゴキブリ以上に危険で恐ろしい昆虫を知ってるか?

史上最強のゴキブリ忌避剤はゴキブリの死体!?

読み進めながら虫に対する姿勢が刻々と移り変わる、とんでもない書籍である。さぁ、一緒に未知なる扉を開いて昆虫界へ足を踏み入れてみませんか?