ゴキブリは進化している?生きた化石と思われていた害虫の王様は、卵生から胎生と時代とともに変化し、古代からそのままじゃない!

害虫の王様、というよりは嫌われ者の王様?のゴキブリは、古代からそのままの姿、生態だと思っていましたがそうでもないのでしょうか。


ゲッチョ先生の卵探検記

キャビアはなんの卵?黄身が二つある卵からは双児がうまれる?世界最大の鳥、エピオルニスの卵は直径何センチ?サメの卵ってどんなの?恐竜、始祖鳥、シーラカンスのうち、卵を生まないのは?ゲッチョ先生とスコーレの生徒たちが繰り広げる、約百種類の卵をめぐる探検記。

著者:盛口満
1962年千葉県生まれ。大学卒業後、埼玉県飯能市にある自由の森学園の理科教師を15年間勤める。生徒から呼ばれたあだ名「ゲッチョ」はカマキリのこと。

ゲッチョ先生という名前から、なんだか動物学者の千石先生をイメージしてしまいます・・・。ま、そんなことはどうでもいいのです。

ふと手に取り読んだのですが、気になった、面白かった箇所があって抜粋して紹介というか、残そうかと思いました。

※夏休み前に昆虫に興味がある子どもが楽しく読める内容だと思います。

害虫ゴキブリは卵生から胎生へ進化しているのだろうか

ゴキブリの卵は当ホームページでも何度か掲載しているけれど、あの小豆色のような、珈琲豆のような黒光した物体なんですが、あれで1個ではないのです。

ゴキブリの卵鞘(らんしょう)は、カマキリの卵鞘とは違って、平たいサヤ状だ。

・・・

当時、僕は観察用に学校でヤマトゴキブリを飼育していた。そのため、卵鞘は産みたてをいつでも手に入れることができた。

ところが、こんな産みたての卵鞘を割ると、中の卵が壊れてしまう。卵を包んでいる膜は、そう丈夫ではないのだ。

おもしろいことに、産卵後しばらくたつと、卵がやや縮み、卵鞘内で収まっているくぼみとの間に少しスキマができ、卵鞘を割っても、卵が壊れずに取り出せるようになる。

こんな「コツ」なんて他に応用もきかない「ミニ知識」だな、とずっと思っていた。

しかし、カマキリの卵鞘の意味を考えるようになって、この「ミニ知識」が別の意味を持ちはじめた。

卵鞘内のゴキブリの卵は、しばらくすると縮んで少し小さくなる。

もし卵鞘がなかったらどうなるのだろう。

卵はカピカピに乾いてしまう?

卵鞘は乾燥防止の役割を果たしているのではないか、と思いいたった。

そう、あの中に沢山の卵が詰まっているというのを知らない人は多いのではないでしょうか。

あ、あまり知りたくもない知識でしたね、できれば知らずにいたほうがよかったかも・・・(汗)。

ゴキブリは古生代石炭紀には、すでに地球上に姿を現している由緒ある虫だ。『ゴキブリ三億年のひみつ』(安富和男、講談社ブルーバックス)という本の中に、この古代のゴキブリについての、興味深い特徴が書かれている。

それは古生代のゴキブリには、産卵管を持ったゴキブリがいる、という話だ。こうした産卵管を持つゴキブリは、恐竜の盛えた中生代の化石からも、まだ見られるという。

産卵管を持っているということは、卵を卵鞘にパック詰めにせず、産卵管を介して朽木などに、卵を1つずつ産み込んでいた・・・・ということだ。

現在のゴキブリに、産卵管を持つ種類はいない。

ゴキブリだって生き残るために変化を選び、ちゃっかりと進化をしていたということでしょうか。強いものが生き残るんじゃなくて、変化できたものが生き残る?

昆虫も元をたどれば海中から陸上へ進出してきた生物だ。カエルやトカゲの卵に見られる工夫と、どこか似た工夫が、虫の卵にも必要なのである。

比べてみると、コオロギの卵は、前章で取り上げた、ヘビやトカゲの卵に似ている。ゴキブリも、最初はこんなタイプの卵を産んでいたわけだ。

やがてゴキブリは卵鞘を産むようになる。卵鞘で包んでしまえば、乾いた場所にさえ、卵を産みつけられるようになったのだ。

ゴキブリは他の生物に比べて強すぎるという感じもしますが・・・(汗)。

チャバネゴキブリ科に属するチャバネゴキブリは、よく知られた屋内害虫だ。チャバネゴキブリも卵鞘を産むが、この卵鞘は産み落とさず、メスがお尻につけたまま持ち歩く。

卵鞘の大きさは8ミリほどで、色が薄く、全体にきゃしゃだ。チャバネゴキブリの場合、メスは持ち歩く間、卵鞘内の卵へ、水分を補給する。

つまりチャバネゴキブリは、卵生から胎生への移行状態を示すゴキブリである。

オオゴキブリ科のゴキブリは、すべて胎生のゴキブリだ。

『日本動物大百科8』の記述では、「メスは卵鞘を一度だけ外に出し、体内の保育のうに収めて十分卵黄をもった卵にだけ水分を与えて、1齡幼虫として産子するまで保育する」とある。

・・・

”赤ちゃんを産むゴキブリがいる”という話を、意外に思う人がいるかもしれない。しかし、胎生のゴキブリは、決して少数派ではない。

日本産のゴキブリで見ると、すべて卵生であるゴキブリ科のゴキブリは9種なのに対し、すべて胎生のオオゴキブリ科のゴキブリは13種いるのである。

もっとも、胎生のゴキブリは屋外でひっそりとくらしているものが多い。やはり単純に、胎生=進んでいる・・・・とは言い難いのだ。

それでも、ゴキブリたちの「流行り」は、カマキリと違って、胎生に移りつつある。

※p170~177